ITストラテジスト試験午後Ⅱ(論文)対策です。今回は2022年(令和4)開催の試験問題を題材にしていきます。まずは問1。「ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品・新サービスの企画」に関する問題です。
こんにちは!セイジュン@エンジニア応援隊(@39Seijun)です。
午後2対策の「論文の骨組み、プロット作り」、2022年(令和4)の問題を題材にとって一緒に考えてみましょう。今回は問1で「ITを活用した新商品・新サービスの企画」に関する問題です。
論文の解法については、こちら午後Ⅱ対策でまとめました。
令和4年春試験:ITストラテジスト区分の午後Ⅱ問題(問1)
今回の例題は、令和4年春試験:ITストラテジスト区分の午後Ⅱ問題の問1を使います。こちらIPAサイトから引用。
さて、問1。タイトルは「ITを活用した顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画について」です。
タイトルからして、「ITを活用した」という枕詞がついた上での「商品企画・サービス企画」という、まさにITストラテジスト試験として面目躍如の問いかけですね。
(以下、「商品・サービス」はまとめて「サービス」と表現しますね)
では、本文の読み解きは後ほどとして、まずは設問ア~ウから論文のプロットを組み立ててみましょう。まずは、設問ア~ウを以下、抜粋します。
設問イ 設問アで述べた顧客満足度を向上させるために、ITを活用してどのような新商品や新サービスを企画したか。顧客との接点や関係性、新たな価値、扱うデータを明確にして、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べた顧客満足度を向上させる新商品や新サービスの企画について、経営層に何を提案し、どのように評価されたか。経営層の評価を受けて改善したこととともに、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
この設問から、論文の骨組み(プロット)を導いてみましょう。設問での文字数指示から凡その文字数も補記してみます。
以下、です。
1.私が携わったITを活用したビジネスモデル・・・設問ア(800字以内の指示に対して、750字を想定)
1.1.事業概要(250字)
1.2.背景にある顧客満足度向上を要する課題(250字)
1.3.事業特性(250字)
2.顧客満足度を向上させるためにITを活用して企画した新サービス・・・設問イ(800字以上1,600字以内の指示に対して、1,200字を想定)
2.1.顧客との接点・関係性(400字)
2.2.新たな価値の提供(400字)
2.3.扱うデータ(400字)
3.新サービスに関する経営層とのコミュニケーション・・・設問ウ(600字以上1,200字以内の指示に対して、800字)
3.1.経営層への提案と評価(400字)
3.2.経営層から受けた評価と改善した内容(400字)
どうでしょう。おおよそのバランス、こんな感じではないでしょうか。
同様の過去問を探してみると、令和2年問2がビンゴでした。
本問が、「ITを活用した新サービス企画」であるのに対し、令2の2は、「ITを活用したビジネスモデル策定」。そして、設問ア~ウの構成もほぼ一緒です。
ここから2つのことが読み取れます。
1.設問のテンプレートがなされている。
設問をテンプレート化することで採点基準も明確になり、採点官も仕事がしやすくなると考えられます。
ですので、受験する側も、章立てや論旨を妙にこねくり回さずに、問われているものをそのまま素直に書いていけば十分に合格圏内に入る。
2.問われているテーマ(コンテンツは)可変かつ最新かつIT(だけ)ではない
出題側の設問とそれに寄りそった回答側の章立ては、テンプレート化されていると書きました。テンプレート化をプラットフォームと言ってもいいかもしれません。
それに対して、プラットフォームの上を走るテーマ、言い換えればコンテンツは、可変です。そして、最新のテーマが織り込まれており、さらにはITはあくまでもツール・道具であり、本質は経営課題の改善にあります。
ここら辺は、SEやPMの延長線上で業務経験を積まれてきた方は、ちょっと面食らう点だと思います。ITストラテジスト(試験)はSierやITベンダーよりも事業会社のIT部門の方のほうがしっくりくるというのも、こういう点にありますね。
最新のテーマ、経営課題の解決のためのITという点でいえば、毎度のご紹介になりますが、
こちらにまとめました。
では、本文を読み進めてみましょう。
本文から章立てを肉付けしてみる
冒頭、「顧客が商品に興味をもってから、購入や利用までの一連の体験を通じて得る満足度を向上させることが差別化のため重要」と始まります。
そのため、ITを活用して、顧客との接点を増やしたり、関係性を高めたりすることで、顧客に新たな価値を感じてもらえる新サービスを提供することがある、とつなぎます。
その後は、具体的な事例として、保険会社による健康増進アプリについて述べられています。
こちら、日本生命さんによるアプリなどがローンチされたのが2021年4月ですから、世の中の事象を試験に取り込む周期がホントに早くなってきましたね。
この具体例の記述の中には、設問アにある「顧客満足度向上を要する課題」(章立ての1.2.)に記載するのにピッタリな「多くの商品ごとに保険料率が一率であることへのユーザの声」をはじめ、設問ウまで含めて、材料の宝庫になっています。
実際に当てはめてみますね。
1.私が携わったITを活用したビジネスモデル
1.1.事業概要
・保険会社にて、IT活用による新サービスの企画を推進
・業界後発でインターネットでの販売が多い同社では、扱う生命保険の分野がBtoCのビジネスであることからユーザ=消費者である顧客満足度向上がカギ
1.2.背景にある顧客満足度向上を要する課題
・多くの商品ごとに保険料率が一率であることへのユーザの声が挙がっている
・契約と保険金の支払以外で顧客との接点が少ない
1.3.事業特性
・保険会社側としても契約者の健康維持が図られれば保険料支払いが低減する
2.顧客満足度を向上させるためにITを活用して企画した新サービス
2.1.顧客との接点・関係性
・インターネット販売中心である点から、顧客との接点はネット経由での接点が中心
・比較的若者のユーザが多い
・契約・保険金の支払中心であるも、ほぼネット経由でコミュニケーションが可能=顧客のITリテラシーが高く、感度もよい
2.2.新たな価値の提供
・スマートフォンデバイスを活用した健康増進アプリを企画
・健康情報を収集し、分析
・健康的な食事などの情報を提供
2.3.扱うデータ
・顧客の同意に基づく健康診断情報の登録
・スマートフォンやスマートウオッチと連携した歩数情報の登録
・食事の画像を登録することでカロリーの簡易計算
3.新サービスに関する経営層とのコミュニケーション
3.1.経営層への提案と評価
・大手スポーツジムと提携することで、優良ユーザへの割引券発行などが実現できないか
・(一定の評価を頂いた上で)健康診断情報は健保組合から登録してもらうことで職域(企業単位)のユーザ獲得に動けないか
3.2.経営層から受けた評価と改善した内容
・経営層が自ら動いていただき、大手スポーツジムとの提携を実現
・あわせて、スポーツ用品メーカとのコラボや健康系Youtuberによる動画コンテンツも制作
・健保組合からのデータ提供については個人情報保護の観点からのリスクなど法務チェックを進めている
どうでしょうか。
本文に示されていた「保険会社による健康増進アプリ」というテーマで、プロットに記載したいことをマッピングすると、こんなメージではないでしょうか。
ざっと一筆書きでバッチワークしてみましたが、あとはこれを2時間という試験時間内で一つのポチ「・」を30文字×3くらいに展開していけば、ごくごく素直な論文が出来上がり、ということになります。
最初、タイトルを見て、その後、本文の1パラグラフを読んだ段階では、いわゆる潜在顧客に対するアプローチかなと思いました。昨今では「カスタマー・ジャーニー」とったマーケ用語もあるので、お時間あればググってみて下さい。
その場合はITではいえばリコメンド機能やSNS展開、マーケティング・サービス企画でいえば潜在顧客のペルソナ把握などと結び付けて論旨を展開かなと思った次第です。
ただ、第2パラグラフ以降、保険会社の事例を読んでみると、既存顧客の満足度向上、プラスアルファのサービス、付加価値を提供することで感動を与える、その上での囲い込み、アップセル戦略だと気づきました。
今回は、本文にあった保険会社の例をマッピングしましたが、既存顧客への付加価値の提供とすれば、そうですね~。
・自動車ディーラによる既存オーナーに対するユーザー車の健康診断
・ワイナリーによる購買履歴からお好みワインの苗木オーナーサービス
など、ここ最近みたニュースから思いつきました。
以上 皆さんの参考になりましたらうれしいです。今回は、ここまで、です。お疲れ様でした。
次回は令和4年問2でプロット作りを行う予定です。また、是非お立ち寄り下さい。