佐野元春&THE COYOTE BAND 今、何処TOUR 2023 東京国際フォーラム9月3日【極私的レビュー】

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セイジュン
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佐野元春さんのライブに行ってきました。9月3日、日曜の夜。台風の影響で雨の予報も出ていたのですが、東京国際フォーラムは優しい熱気に包まれていました。極私的ライブレビューです。

18時過ぎ。定刻から若干押した後、ライブの開始を告げる場内放送が流れ、ホールの照明が落とされます。満員の観客からは待ちきれない拍手、そして1階の観客は早くもスタンディングです。

2022年7月のリリース、現時点の最新アルバムである「今、何処」からオープニングのエレクトリックなインストゥルメンタルが流れ、バンドメンバーが登場です。

「さよなら、メランコリア」

そして元春がステージに。同アルバムの1曲目「さよなら、メランコリア」からライブスタートです。

1980年。元春のデビューは、僕そして僕らの世代にとって、静かではあったけれど強烈なインパクトでした。

深夜のラジオから流れてきたデビュー曲「アンジェリーナ」のイントロの疾走感。

「BACK TO THE STREET」、「Heart Beat」の2枚のアルバムのピュアな抒情性。大瀧さん、杉さんとの「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」の明るいポップさ。
そして「SOMEDAY」。

僕の場合は、自分のお小遣いで初めて買ったLPが「Heart Beat」。使い古された言葉ですが、レコードが擦り切れるまで聴きました。

ミュージシャン、ソングライターとしての元春は、同時にポップカルチャー、サブカルチャーの伝道師でもありました。

NHKFMの「サウンドストリート」では6年間にわたって月曜日担当。途中、NYに拠点を移しながらも放送を続けていました。セントラルパークに住むヤギにインタビューしたという”伝説”の回もこの当時でしたね。

1983年から86年にかけてのサウンドストリートは、月曜:佐野元春、火曜:坂本龍一、水曜:甲斐よしひろ、木曜:山下達郎、金曜:渋谷陽一。夢のラインナップでした。

ラジオDJや書籍出版、雑誌のインタビューを通じて、元春が教えてくれた例えば米文学、ビートニクス、ポエトリーリーディング、フランス映画、ジャズ、、、、。それまでテレビの歌番組やドラマしか知らなかった中学生にとって魅惑的なポップカルチャー・サブカルチャーでした。

僕らが恐る恐るドアをノックしたら、元春が「やあ、よく来たね。こっちにも楽しいことがあるよ」とあの優しい声とともに招き入れてくれた感じです。

 

「銀の月」

さて、ライブに戻ります。同じく最新アルバムから「銀の月」。その後も「今、何処」と前作「ENTERTAINMENT!」からの曲が続きます。

ドラム(小松シゲル)、ベース(高桑圭)、ツインギター(深沼元昭、藤田顕)、キーボード(渡辺シュンスケ)、そして元春という編成から繰り出される音は、エッジが利いていて、タイトでシャープで、ある時はキース風のダーティさで。時に素朴で明るくて。

かつてホーンセクションや女性コーラスも加えた大編成だった時とは異なり、いい意味で質実剛健、マニッシュなバンドだと感じました。

序盤のMCで、THE COYOTE BANDを紹介。「このメンバーとも18年になります」と元春。そうなんだ~。ついこの間のような気がしていた、僕は何をしていたんだろう。。。

 

「SOMEDAY」リリース後、1983年渡米。
NYでの充電を経てリリースされた「VISITORS」の衝撃。発売当初は(かつての佐野さんじゃないという保守的な見方もあって)賛否両論でしたが、インパクトは今も持ち続けています。ラジオやyoutubeから、ふいに流れてくる「COMPLICATION SHAKEDOWN」。やっぱり今でもソラで唄えます。
その後も「Café Bohemia」「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」や「Sweet16」を経て、THE HEARTLAND解散、The Hobo King Bandの結成を経て1996年、傑作「FRUITS」リリース。個人的には、このアルバムまでリアルタイムで聴いていましたが、その後、社会人になり忙しさにかまけて新しい音楽に触れない灰色の時期が続きました。
それは音楽だけではありませんでした。この頃の数年間は、映画館で新作映画を観た記憶がありません。
音楽をはじめとしたポップカルチャーに触れなかった訳ではなく、職場の閉じた人間関係の中でメガヒットが続くJPOPを2次会のカラオケで歌ったりといった、そうまさに「つまらない大人」になっていた時期だったのかも知れません。

 

ライブは中盤へ。THE COYOTE BAND初期の名作が続きます。

「ポーラスタア」

この曲を聴くと、大瀧さんを思い出します。

 

さらに「今、何処」の曲が続きます。

最新アルバムだから古いファンにとって違和感があるかというと、実は全然そうではありません。

観客みんな、コロナ禍によってライブもままならかった数年でタフになっています。

僕もコロナ禍によって失われた4年、どころかTHE COYOTE BAND結成後の6枚のアルバムを聴き込んで この日を迎えました。失った時を求めて。「つまらない大人」にならないために。

 

「水のように」

そして元春の楽曲も、今と過去が行き来しています。最新アルバムの中の一曲「水のように」が演奏されます。この中の一節に

 

いつだって誰もが誰かに 胸締めつけられて 風に泣く

 

とあります。このフレーズがくれば、「麗しのドンナ・アンナ」(SOMEDAY収録)を聴いていたあの頃を思い出し、まさにグッと胸が締めつけられます。

元春の歌詞/詩は、平易な言葉を使って愛を語り、ユーモアを込めて前向きな日常を描き、時に痛烈な皮肉を込めて権威を批判します。

具体と抽象の間を行ったり来たりしながら、詩と音楽(メロディとビート)、そして独特の声が絡み合って、やっぱりそれは「元春」節でも言うしかないような世界に昇華していきます。

 

個人的には、同じく「水のように」の中で

そうさ、またいつか会える その日まで 元気で

 

が心にしみました。こんな簡単な言葉を歌詞に込めて、前向きに唄えるって本当にすごいことなんじゃないかな。

やがて本編終了。しばしの後、アンコールが始まります。

 

「約束の橋」

この曲は、冒頭のホーンセクションがあってこそのものかなと思っていましたが、THE COYOTE BANDの演奏がそんな先入観を払拭してくれます。キーボード・ギターの明るい音色とドラムとベースの疾走感がしっくりきました。

そして「Sweet16」

WoW Wow 夢見てるSweet16
虹をまき散らして
Dance Dance 夜明けまで
I'm gonna be with you

 

曲が終わると、いつものように急に照れくさそうに舞台カミシモに頭を下げる元春。変わってないなあ~。

ここでアンコール終了。当然、拍手も鳴りやまずダブル・アンコールとなりました。

バンドメンバーと元春が、みたびステージへ。そして、元春が語り始めます。

大瀧詠一も PANTAも 清志郎も 坂本龍一もいない時代に生きている。彼らの新しい曲が聴けないのは残念です。でも、彼らが残してくれたものを忘れないように、よかったら一緒に歌ってください。

 

そして「SOMEDAY」のイントロが流れます。観客みんな、涙腺決壊。

それぞれ思い思いに唄いますが、それは懐メロの合唱ではなく、2023年の「今」の気持ちが込められていました。

サックスが奏でていた間奏のメロディは、元春みずからのブルースハープによるもの。ほんと、胸に沁みました。

そして、最後の曲。

「アンジェリーナ」

1980年のデビュー曲を40年も経って、ダブルアンコールの最後に持ってくる。

そしてそれが最高の演奏でホールに響き渡り、観客全員も唄ったり踊ったり参加できる。

本当に素敵な時間でした。

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今まで、ライブの感想・レビューといったものを書いたことがなかったのですが、今年は「推しは推せるときに推せ」と思い立ち、記事にしてみました。どうでしたか?

コンサート・ライブも、また行こう!ではでは。以上、セイジュン(@39Seijun)でした。Twitter もとい”X"をやっています。宜しければフォローをお願いします。

 

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